「ここ、また撮影やってたでしょ?」 「毎年この時期になると特に多いね」 「こないだのは映画の撮影や言うて、メイク直しにここ使いはったわ。えらい有名人みたいで、サイン書いてもらって」 これは、ある日の[リバーバンク]でのオーナーご夫妻とお客さんの会話である。 この会話からもわかるように、[リバーバンク]から見える荒神橋と鴨川の風景は毎年テレビや映画のロケで使われるほど、絵になる風景なのだ。中には、プライベートで訪れる女優もいるというほどだ。 そう、タイル張りの壁や、いい感じにくたびれた椅子など雰囲気ひとつとってみても「カフェ」と呼ぶよりかは、「喫茶」と呼びたい。単に「古い」のではなく、壁も椅子もどことなく「熟成された」ような雰囲気をかもし出している。 メニューでも、カレーライスやハンバーグといった喫茶の王道をいく料理がラインナップされているのは、おしゃれなカフェにすっかり慣れてしまった若い世代にとっても新鮮で嬉しい。中でも人気はオリジナルの鴨川弁当。ひょうたん型の弁当箱には豚しゃぶ、京のおそうざいが入って見栄えも色鮮やかできれい。外国人のお客さんにも好評というのはうなずける。また京風ぜんざいやお抹茶と和菓子のセットなど、ちゃんと「京都っぽいもの」のツボを心得ているのもさすが。 今年で45年目を迎える[リバーバンク]は、全国各地にファンを抱える。近隣には京大、同志社、立命館…大学生の溜まり場的な存在だった。学生時代に[リバーバンク]へ通っていた人が子供と一緒に来たり、同窓会として[リバーバンク]で集まったり。 「残ったのはうちぐらい。この近辺の店はみんな変わっちゃった」 しかし、残った[リバーバンク]は何も変わらない。ご主人がデザインしたままのモダンな内装、一面ガラス張りの窓。そこから見える鴨川や、大文字の眺めも昔と全く同じだ。 唯一変わった眺めと言えば、向こう岸に建ったレンガ造りの留学生会館。しかし、今ではそこに通う留学生たちが[リバーバンク]を訪れ、昔とは一味違う国際色豊かな表情になることもある。 店自体は変わっていなくても、人の流れがその時その時の時代を反映している。[リバーバンク]は、京都の今を映し出す映画のような喫茶店なのかもしれない。 |